2.こういう公募は注意が必要!

プレビ⁠ュ⁠ー

私たちがこういった公募のリスティングを行なっている理由の一つに、世の中にはあまりオススメしない公募も少なくないので、そのような公募はあらかじめ避けて、アーティスト・キュレーターの皆さんにとってプラスになる若しくは糧になる公募をお届けしたいという点があります。

簡単にどういうことかと言うと、その公募の先にあるのは果たしてアーティストの利益なのか、と言うことです。海外の公募にすでに目を向けている方にとっては、公募の情報源はアートパフィンだけでないことも多いと思います。その際、アーティスト側が食い物にされているような公募を掲載していたりするプラットフォームやSNSも散見されるのです。なのでそういった際に、頭の片隅に置いておいて欲しいですし、私たちも出来るだけその種の公募は載せないように努めますが、見極めが足りない場合も出てくるかもしれませんので、こちらでいくつかのポイントをシェアしたいと思います。また、最後に申請料について少し触れていますのでそちらもご覧ください。

1. 公募締切から実施時期までが極端に短い

この項に関しては、作品を海外に輸送しなければならない場合に注意が必要です。あまりに短いとはどれくらいかと言うと、目安は発表から1ヶ月以内です。公募展は意外とすぐに展示できる機会も少なくないのですが、あまりに短い場合の懸念点は主催者側の「作品の扱い」です。そしてできるだけ輸送コストを抑えたい場合はなおさら注意が必要です。

よくある例では、作品が返ってこない、返ってきた時に作品に損傷がある、などが挙げられます。短いスパンで国際的な募集と実施を行なっているギャラリーや企画はその辺が疎かなケースが少なくありません。これはアートフェアも同じです。同じ組織がアートフェアのタイトルと場所を変えて頻繁に行なっている場合もよくありますが、そういった場合にも同様のトラブルのリスクが高いです。大事な作品が外国でトラブルに巻き込まれるケースはなかなか悲惨です。時間的余裕は保障をつけたり、厳重な梱包などこちら側で打てるオプションも増えることになりますので、あまりに短いスケジュールの公募はおすすめできません。

2. ひとつの主催者が高頻度で主催している

前項でも述べたように、同じ組織がタイトルと場所を変えて頻繁に行なっている場合は注意が必要です。必然的にアーティストへの対応やケア、思い入れは希薄になっていきます。その結果、トラブルが多いことも簡単に予想できます。以前筆者も実際に応募フォーム入力まで行きましたが、作品が戻ってこなかった、展示後から連絡がつかなくなる、などのレビューを見つけ、応募を回避しました。

見分けるポイントの一つは、謳い文句が「NYであなたの作品を多くのアートラバーに見てもらいましょう!」など、大都市のブランドで惹きつけている事が多いことです。ヴェニスやロンドンも多いです。これを判断するにはWebサイトに行って、いろんな過去の事例等を精査する必要がありますが、これもかなり無駄な時間なので、アートパフィンでは最大限目を光らせてお届けしています。

3. 有料での記事掲載

世界にはインディペンデント誌から大手出版社までアート専門誌・メディアが溢れています。その中でも注意して欲しいのが、申請料だけでなく掲載料を取っている雑誌やメディアです。彼らは本来コンテンツを売らなければいけないはずなのに、アーティストの申請料を収益源にしています。雑誌の売り上げや広告費等の収益増を頑張ってコンテンツであるアーティストの露出や紹介という健全さや、新たな手法はなく、アーティストに頼っています。そう言ったメディアが成長しているケースは見た事がないので、あまりおすすめはできません。

また、申請料は無料で、選出されたアーティストのみ掲載および出版料がかかる場合もあります。これに関しては申請時にリスクはなく、選出後にその掲載・出版料をご自身がどう捉えるかと言うことになりますが、このタイプの雑誌はインディペンデント且つ美術館や文化施設等のショップで扱われていることも少なくないため、装丁や高品質印刷費用の部分的サポートを掲載作家にお願いしているケースが多いと思います。ですので、申請料か掲載/出版料のどちらかなら自分で考えた上で応募するか否かを考えてください。

また、有名なアートメディアではArtist Directory (アーティスト ディレクトリ) と言って、設定額を支払えば雑誌のページの一角に掲載したり、プラットフォームのセクションに載せてくれたりするアーティストデータベースがあります。こちらは存分に活用されるといいと思います。アーティスト ディレクトリを保有しているメディアは有名な美術館、ギャラリーでの取り扱いや、購読者数・登録者数も相当数ですし、アートプロフェッショナルたちも手に取るため、損はありません。

4. ヴァニティギャラリー

ヴァニティギャラリーは自費展示を主に行うギャラリーのことで、もちろん多くの健全なヴァニティギャラリーがあります。ここで注意して欲しいヴァニティギャラリーとは、公募とはまた違い、EメールやDMで直接応募に勧誘してくるケースが多いです(もちろんヴァニティ公募もあります)。1週間ほどの展示で場所代10~30万円ほどを設定している事があります (個人で出展できるアートフェアなどの出展とはまた別)。 追記:こういったヴァニティギャラリーがスポンサーや協賛で絡んだ公募もあり、これもこの時点で黄色信号です。日本の公募情報でも散見されます。

また、新たな契約アーティストの公募を謳って年間の契約料をとるケースもあります。そしてこれらの金額に関する情報が最後に少し載っていたり、見落としやすい書き方をしています。そしてそう言うギャラリーは往々にしてメジャーなアートシティに拠点があり、注意を逸らして話を前に進めようとします。

筆者のケースではバーゼル、ヴェニス、ニューヨークが多いです。そしてやはり最初は凄く嬉しく、ものすごく前のめりだったのを覚えています。幸い、丁寧にリサーチをしてネガティブなヴァニティギャラリーであることが分かったのでよかったのですが、直接の絶賛と都市のネームバリューには心が動かされますので要注意です。

もちろん、それがアーティストにとってどれほど利益がある事なのか、何に重きを置くのか、判断するのは個々人で全く異なるので否定も肯定もありません。ですが、この場合の前提として、そのギャラリーにとっての顧客は作品を買ってくれるお客さんではなく、アーティストです。そのため、作品を売ることに対する熱量に欠けるケースが多く、なかなかキャリアアップを後押ししてくれている存在とは言い難いと思います。また、マージンもそれなりに取ってくるはずです。もちろん、ロケーションが素晴らしく、コレクターやアートプロフェッショナルたちの目に留まりやすい、売れやすい、積極的に在廊して自分でネットワークを築ける方など、メリットもあるはずですので最終的には個人の裁量です。

申請料について

申請料の有無が応募するか否かに影響することもあるかと思います。実際、条件絞り込みのフィルターに加えるか凄く悩みました(今後加えることもあるかも)。

しかし、ここには主催者側の明確な意図もあります。それは、私たちのような公募をリストアップしたプラットフォームやSNSでの拡散により、かなりの応募が来る事があり、その少なくない数が「とりあえず無料だし応募しとこう」勢だからです。私たちもいちアーティストとして勿論その一部であることもありますし、皆さんにもチャンスがあるのだからとりあえず応募してみることを強くお勧めします。ですが、主催者側からすると、そもそも条件外やあまりに応募の質が低い応募にも時間を割かれることになり、労力と人件費がかなりシビアになってきます。申請料を設けることは「ある程度ターゲット層のアーティストやキュレーターが応募してくる」ためのフィルターの役割も果たしています。そういう意味で、一定の申請料は自身がそのフィルターを抜けることでもありますので、すぐに候補から外すのは早計です。

ただ、筆者の主観では¥7,000~8,000がボーダーラインかなと感じています。つまり申請料が通貨関係なしに40という数字、$40, £40, €40あたりを超してくると、ボーダー超えのお金の行方、自分へのフィット具合や、採択後の先にあるもの、不採択の際に糧になる公募かなどを本当に熟考する必要があると考えています 。ただ、アートパフィンでも40オーバーの公募で我々目線でいいなと思えば掲載しますので、あとはご自身で相談して欲しいと思います。

いかがだったでしょうか。今回は応募する際に念頭に置いて欲しい、注意してほしい事項をまとめてみました。こちらの記事は随時思いついたら更新していきますので、たまに読み直しに戻ってきてみてください。

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