4.声を大にして伝えたい出版系公募のススメ

プレビ⁠ュ⁠ー

出版系公募、実はとってもチャンスなんです。

日本にもアート専門誌、アート情報メディアなどいくつかあると思います。ただ、日本の人口プラス何人の潜在読者がいるか想像してみてください。日本語をめちゃくちゃ勉強して漢字がわかる人でアートに興味があって日本語のアートメディアに辿り着くか、日本から取り寄せる、もしくは訪日に合わせて日本メディアの情報を多言語でどうにか検索して辿り着く人のことです。

さて、外国語ではどうでしょう。まず英語・スペイン語ネイティブ話者が約4億人ずついます。それプラス、多くの国で英語学習をカリキュラムに組み込んでいます。そうなると英語の雑誌を読める人は…もうすごい数です。

つまり何が言いたいかというと、英語のアート専門誌・メディアに掲載されることは国際的な露出・広告と同義なのです。SNSでいくら自ら世界に発信できるようになった時代であろうと、SNSをやっていなかったり、敬遠しているアートプロフェッショナル・コレクター達は少なからずいます。事実、筆者の友人でもSNSはやっていないが、過去に専門誌や新聞で特集してもらった事によって顧客からの問い合わせが絶えないというアーティストがいます。また、そういったメディアが紹介するアーティストであることで、アートプロフェッショナル・コレクター達たちにとってひとつの指標にもなりますし、美術館や文化施設が取り扱っているケースも多いので一般への露出も期待できます。

また、メディア掲載は先方からのアプローチによるものだけだと思っていませんか?実際、有名な媒体でない限りビッグネームのインタビューやコンテンツを、湯水の如く期待のアーティストを発掘できるわけではなく、メディア側も探しているんです。実際に日本語の情報で海外の出版系公募情報がどこまで知られているか分かりませんが、海外での展示以外でキャリアアップにつながる公募のひとつでもありますのでアートパフィンで見かけた際には是非一度考えてみてください。カテゴリは“コンペ”になります。今回は出版系公募の種類と、意外と恐れる必要のない掲載までのプロセスについて説明します。

出版系公募の種類

1. 作品掲載

作品掲載はシンプルに自分の作品をコンテンツの一つとして掲載してくれます。雑誌の場合は1/8ページから4ページ特集など様々なパターンがあります。内容としては、文章は無く作家名・作品名など一般的な情報と作品写真だけの場合と、出版側が文を用意してくれる場合、自分で文を用意する場合があります。

掲載までのプロセスでよくみられるパターンは以下です。
・応募:作品の写真、CV、Short Biography(以下Short Bio) と呼ばれる短い紹介文
・選出:連絡があり、作品の高画質写真、自分で文を用意する場合はその文章の提出。
・確認:出版前に一度PDF等で出版前のデータを見せてくれることが多い。文章もここで再度チェック。
・出版:実際にできた本をくれる場合、デジタルデータだけをくれる場合、割引コードをくれる場合、など様々。

2. 作品&インタビュー掲載

こちらは、インタビュー記事の掲載公募で必然的に作品掲載もあります。また、1の応募の中から更に数人はインタビューも載せます、というパターンもよくあります。いや、英語のインタビューとか厳しいって…と思ったあなた!そんなことはありません。出版側も私たちとオンラインで何時間も話す時間まではない事が多いので、質疑のやり取りはメールで行われます。そうです、このご時世、優秀な翻訳ツールがありますのでそれらを有効活用してやり取りを行えばいいんです。

掲載までのプロセスでよくみられるパターンは以下です。
・応募:作品の写真、CV、Short Bio 、アーティストステートメント
・選出:連絡があり、作品の高画質写真、流れの説明
・インタビュー:あなたの作品や制作に関する質問のリストが送られてくるので、答えて返信する。
・調整:文法やネイティブ的に不自然な表現や言い回しなどを向こうでいい感じに手直ししてくれ、など頼むこともできます。
・確認:出版前に一度PDF等で出版前のデータを見せてくれることが多い。文章もここで再度チェック。
・出版:実際にできた本をくれる場合、デジタルデータだけをくれる場合、割引コードをくれる場合、など様々。

3. アーティスト ディレクトリ

これは企画として公募されているのではなく、常にオープンな公募で、いわばアーティストデータベースのようなもので、さらに平たく言えば“アートプロフェッショナル・コレクター達に向けた広告”です。比較的大きいアート専門メディアはアーティスト ディレクトリを設けているケースが多いように思います。お金を払えば誰でも載せますよ、というパターンから、審査が必要だったり、そもそもメディア側からのアプローチでしか掲載されないパターンまで様々です。これは雑誌の場合だと巻末の数ページの1/8~1/2 に掲載してくれますし、オンラインメディアだと、セクションを設けてアルファベット順やジャンル順で検索できるようになっていたりします。

掲載までのプロセスでよくみられるパターンは以下です。

・応募:作品の高画質写真、CV、Short Bio、掲載料
・選出:選考がある場合のみ
・出版:特に賞与なしの場合が多い。

4. コンペの賞与の中に含まれる

出版系公募とは少し異なりますが、コンペの賞与として賞金や展示+出版物という公募もあります。こちらは主催者がメディアを持っていたり自社出版で図録や雑誌を出している場合に多く見られます。母体がアートメディアである前述の3種よりリーチできる読者は少ないかも知れず、パッケージでの賞与は競争率も高いですが、アワードや賞金に付随して出版してもらえることは、いずれにしても私たちのキャリアにとっての価値はとても大きいものです。

一般的にこの1〜3のパターン+4が主な出版系公募です。インタビュー記事がいい点は、自分のウェブサイトに自分で説明した文章を載せる必要性が減る、という点だと思います。やはり洗練されたアーティストのウェブサイトは文字情報が少ない事が多いですし、欧米ではギャラリー所属を視野に入れている場合はウェブサイトに作品説明や自身の制作背景等を語ることはあまり良しとされていない傾向にあります。そこで、CV、About内のPublicationやBibliography等のセクションでインタビュー記事のリンクを設定しておく事が持つ意味は絶大です。

アートパフィンでは海外に実際に自分が赴かずとも得ることのできる機会の代名詞として、出版系公募にも注力してお届けしています。2度目になりますが、カテゴリ分けはコンペです。多くの方がこのチャンスに気付き、キャリアアップにつながることを願っています。

*この記事を無断転載、コピー、複製、再配布することを固く禁じます。

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