4. TOP10 現代アートマガジン
今回は世界のTOP10現代アートマガジンと称し、これらに掲載されたらグッと箔が付くよ、ひとつの指標としてCVなどでも有効に働くよ、というクラスの世界の現代アート“雑誌”を紹介します。オンラインマガジンではなく、印刷出版されるマガジンに絞りお届けします。
紹介順に順位など優劣はなく、アルファベット順に並んでいます。英語であること、メディアとしてアート界を牽引している、キャリアのあるアートプロフェッショナルが記事を寄稿していること、美術館や著名なギャラリーで取り扱われていること、などを基準に選定しています。
2002年創刊のイギリスの現代アートマガジンで、50万人以上の読者を誇る、世界で最も読まれているアートマガジンの一つ。アートだけではなく、映画や音楽などのコンテンツも取り上げている。Aesthetica Magazine の売りはなんといっても圧倒的なビジュアルイメージで、プリントと掲載作品のイメージの美しさが、アート界でのポジションを確固たるものにしている。イギリスではテートモダンやRAなどのトップミュージアムで取り扱われている。また、毎年世界のトップ20、125のアーティストを選出する Aesthetica Art Prize や Aesthetica Short Film Festival、Aesthetica Creative Writing Award など、発信だけではなく、場作りや才能発掘でも広く知られている。
1925年創刊の世界で最も歴史あるアートマガジン。現代アートにフォーカスした深みのあるコンテンツで知られ、最新のトピックからトレンド、潮流まで掴むことができる。アーティストやコレクター、その他のアートプロフェッショナルたちへの内容の濃いインタビュー記事も高く評価されており、マーケット情報やアートコレクションに関する洞察も得ることができる。老舗ながらも充実したオンラインコンテンツもApollo Magazine の強み。
3. ARTFORUM
1962年にアメリカで創刊された現代アートマガジンで、現在世界で最も知られたアートメディアの一つ。手に取ったりオンラインで見たけたことがある方も少なくないはず。経験豊富なライター、キュレーター陣の寄稿するコンテンツは評価が高く、ARTFORUMをチェックしておけばシーンの潮流や注目のアーティスト等が把握できるだろう。また、膨大で良質なオンラインコンテンツも業界随一なのが ARTFORUM の魅力。 雑誌には無い最新のニュースや動画コンテンツなども充実している。
4. ArtNexus
1976年創刊の南米の現代アートにフォーカスしたマガジン。スペイン語と英語で発刊しており、南米の著名な批評家やキュレーターたちをライターに迎え、ラテンアメリカ系のアートシーン、マーケットを深掘りできる。南米で展示や何かしらの機会があったりした場合には真っ先にコンタクトを取るべきメディア。
5. Art Review
1949年創刊のイギリスの現代アートマガジンでARTFORUMと並び最も知られているもののひとつ。良質なレビューやインタビュー記事は多岐に渡り、アートシーンのみならずカルチャーシーンをも内包しながら現代アートシーンを俯瞰で届けている。また、2013年には Art Review Asia を創刊し、アジアの現代アートシーンを世界に発信している。今回のラインナップの中でもオンラインコンテンツの充実度は群を抜いていると言え、ウェブサイトも見やすく心地いいデザインにリニューアルされた。ポッドキャストも配信されているので、リスニングの勉強も兼ねてインプットするのも良いかもしれない。
6. CURA
2009年創刊の CURA は他のマガジンとは一線を画す。CURA はアーティストやシーン、作品というよりは、キュレーションそのものに焦点を当て、展示の批評や現代アートとしての新たな言語、表現方法に関してのコンテンツを発信している。そのため、雑誌自体も雑誌のカテゴリを超え、紙をベースとした展示空間としてダイナミックな構成と表現を行う。そのことからも言えるように、圧倒的な彼らの美学に基づいてデザインされたこの雑誌は、所有欲も掻き立てる雑誌とも言える。
2018年にイギリスの現代アート大好きグラフィックコミュニケーションデザイナー2人組によって創刊された現代アートマガジン。このÉmergent Magazine は個人的に最もお気に入りの雑誌。伝統的なメディアや素材よりも、より現代アートの境界を押し広げるようなプロジェクトやアプローチの注目アーティスト、展示を取り上げている。そして、雑誌そのもののエディトリアル、グラフィックデザインも際立っており、MoMA、Tate Modern、Serpentine Galleryといった名だたる美術館で取り扱われているのも納得。整理されたオンラインコンテンツは文字が少なめのビジュアル優位でインスピレーションを掻き立ててくれるのでまずは一度覗いてみて欲しい。
8. Flash Art
1967年創刊のイタリア語と英語で発刊されているマガジン。一般的なコマーシャルギャラリーで見られるような展示というよりは、新進ジャンルや革新的なプロジェクトを取り上げてきたアートマガジン。オンラインコンテンツにも力を入れており、独自のテーマごとにキュレーションされている。
9. HI FRUCTOSE
2005年にAttaboy と Annie Owens の2人のアーティストによって創刊された“アーティスト・ラン・マガジン”。HI FRUCTOSE も異彩を放つマガジンの一つで、いわゆるギャラリーや美術館展示の批評や著名アーティストの記事ではなく、公募によって選ばれたアーティストたちを特集している。そしてその多くがこれまで知られていなかったアーティストたちであり、彼らを特集する雑誌が老舗や資本に割って入り、独自のポジションを確立しているというのはとてつもなく大きな意味がある。エマージングアーティストのキャリアアップを手助けをしたいアートパフィンとしてとても支持しているアートマガジン。
10. JUXTAPOZ
1994年にアーティストとコレクターのグループによって創刊されたアートマガジン。ポップアートやコンセプチュアルアートといった歴史的に現代アートとして認知され時に難解なアートと、ストリートアートやイラストレーションアート、サイケデリックアートといった新進ジャンルをつなぐことを理念としている。その理念が、人々にとってよりアートを親しみやすくし、多くの支持者を集め、2009年にはARTFORUM 等の競合マガジンを抑え売上数で世界トップとなり、指折りの現代アートマガジンへと成長した。
いかがだったでしょうか。今回はTOP10現代アートマガジンをお届けしました。いくつかは公募も行なっていますし、今後これらの雑誌に取り上げられると、より国際的な露出と認知が期待できます。以前の「出版系公募のススメ」でも述べたように、今の拠点から海外のチャンスを得られる公募の一つです。また、今回挙げた雑誌以外にも良質なアートマガジンやメディアは多くありますので是非アンテナを張って応募してみてください。
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