アーティスト ステートメント前編/ 役割とTips
今回はアーティスト ステートメントを海外の審査員向けor英語版ウェブサイト用に自分で作る際のポイントをお伝えしていきます。
ここで、ひとつ断っておかねばならないのですが、これから記すものは私のここ3〜4年の欧米での経験と、いろんな本、記事で参考になったポイントの詰め合わせのようなものなので、正解でもなければ、決まったセオリーでもありません。ちょっと参考になるかも程度で読んでください。(また、ウェブサイトにステートメントを掲載するのか否か問題がありますが、それはまたウェブサイトの記事で追って言及します。)
ポートフォリオサイトからアートギャラリーまで、芸術関係者はアーティスト ステートメントから様々な恩恵を受けています。レジデンスやアート公募に応募するにしても、ギャラリーにポートフォリオを提出するにしても、コンペに参加するにしても、アーティスト ステートメントはあなたを際立たせるのに役立ちます。作品に惹かれた審査側の人は、あなたの制作プロセスについてもっと知りたいと思うでしょう。皆さんも日頃からより多くの観客にリーチし、芸術的メッセージを世に送り出すためにオンラインプラットフォームを利用しているのではないでしょうか。そこで人々は初めてあなたの作品を目にし、才能あるビジュアルアーティスト、写真家、キュレーターとしてのあなたを知るかもしれません。私たちはデジタルの時代に生きており、アートでさえも、ほとんどのものがインターネット上で初めて体験されています。そして残念なことに、スクリーン上でアートを見ることは、作品の本質を見極めることをしばしば難しくします。
パフォーマンスアート作品の静止画は写真と間違われるかもしれないし、彫刻の写真は絵画のように見えるかもしれない。スーパーリアリズムペインティングは、実在の人物や物体の写真だと思われるかもしれません。さらに進化するAIは活発な議論が行われていますし、適切な説明がなければ、ミクストメディアを使っていることや、他とは一線を画す非常にユニークな手法を使っていることに気づかれないかもしれません。
適切な文脈がなければ、オンラインであろうと対面であろうと、観客はあなたの作品を見て混乱したり、誤解したり、作品の背後にあるあなたのメッセージや意図について思い込んだりする可能性があります。そして、人々があなたの作品をどのように解釈するかはほとんどコントロールできないものですが、アーティスト ステートメントの目標は、あなた自身の言葉であなたのストーリーを語り、読者を正しい方向に導くことです。あなたのアーティストとしての一種の哲学を示す文章とも言え、テーマや背景、プロセス、信念など読み手があなたの制作全体を把握するのに必要だと思われるものが構成のベースになっていきます。そして、何より重要になってくる、「何をしているのか、なぜあなたがそれをするのか」whatとwhyを提示するのがアーティストステートメントであると思います。
私がこの記事を書くまでに読んだ本や記事の中から、手法を取り入れたり参考になった3冊載せておきます。英語で読める人はこの記事も読んで欲しいですが、この3冊を読み込めばかなりためになると思います。
また、下に挙げた本の中では、あるギャラリストが「月に1度もしくは3ヶ月に1度はアーティスト ステートメントを見直し、アップデートしなさい」と言っています。アーティストが人間であるように作品のテーマや目の前にある世界は時とともに移ろい、変化しているはずです。なので大学を出た時に書いたステートメントと、35歳、50歳で書いたステートメントは違ったものになってくるし、なるべきです。ステートメントを見直すことで思考が整理されたり、その先の制作のガイドになってくれたりします。アーティスト ステートメントは、何かに応募するためだけに用意するものではなく、キャリアの輪郭を作る重要なもののひとつである様に私は感じています。なので、そういう視点からも捉えられる様に、その道のプロの言葉と私の経験を交えながら説明していきます。